物流界隈(物流センターや倉庫業、運送業)で使えそうな補助金

令和2年度第3次補正予算も国会を通過し、令和3年度予算の内容もある程度見えてきた中、物流界隈、具体的には物流センターや倉庫業、トラック運送業でも使えそうな経済産業省関連の補助金がいくつかあるので、ご紹介させていただきます。

※2021年2月10日時点の情報を基に書いてますので、具体的な内容が発表される前ですので、その点ご了承ください。

■事業再構築補助金

今年の目玉はやはり、事業再構築補助金(中小企業等事業再構築促進事業)ですね。

予算規模が1兆1,485億円ととても大きくと、補助金の額も通常枠で100万円~6,000万円と金額が大きいのが特長ですね。

ポストコロナ・ウィズコロナ時代の経済社会の変化に対応するための「企業の思い切った事業再構築を支援」する補助金になります。

物流界隈(物流センターや倉庫業、運送業)にとって、事業再構築補助金が良い点は補助対象経費として、建物費・建物改修費が対象になる点です。あとで紹介するものづくり補助金も含めて多くの補助金では、不動産扱いになる建物費や建物改修費は対象にならないことが多いのですが、今回の事業再構築補助金では対象になる点です。

建物や建物改修費が補助金の対象になるということは、倉庫の建築や倉庫の改修なども候補になるという点です。

但し、事業再構築補助金を申請するためには以下の要件を満たす必要があります。

<申請の要件>

以下の3つの要件を全て満たす必要があります。

1.申請前の直近6か月間のうち、任意の3か月の合計売上高が、コロナ以前の同3か月の合計売上高と比較して10%以上減少している中小企業等。

2.事業計画を認定経営革新等支援機関や金融機関と策定し、一体となって事業再構築に取り組む中小企業等。

3.補助事業終了後3~5年で付加価値額の年率平均3.0%(一部5.0%)以上増加、又は従業員一人当たり付加価値額の年率平均3.0%(一部5.0%)以上増加の達成。

1の売上要件は、今回の新型コロナウイルスによる影響を受けているということが要件になるので、売上が上がっている事業者は残念ながら対象になりません。

2に書かれている「認定経営革新等支援機関」とは、私(板垣大介)のような中小企業診断士や税理士などが認定取得している場合が多いです。もちろん、私も「認定経営革新等支援機関」の認定を取得しています。身近に「認定経営革新等支援機関」の人が居らっしゃらない場合は、下記の検索システムで検索してみてください。

(認定支援機関検索システム)

もう一つ大切なことは、「事業再構築に取り組む中小企業等」です。

具体的には、新分野展開や業態転換、事業・業種転換等の取組、事業再編又はこれらの取組を通じた規模の拡大等を目指す投資内容である必要があります。

ようは、新しいことをする必要があります。

物流界隈(物流センターや倉庫業、運送業)にとって、事業再構築の内容としてどんなことがあるか考えてみたいと思います。

※あくまでも現時点(2/10)の情報で対象になると考えられるだけなので、その点はご了承ください。

〇トラック運送業が安定して荷物を確保するために、倉庫や配送センターを建てる
・自ら倉庫を建てることで、自倉庫で保管している荷物の輸送貨物を確保すること
・長距離中心だったものを、配送センターを立てることで地場の共配に参入する

〇一般倉庫の倉庫業が食品を取り扱うために、既存の倉庫を冷蔵倉庫に改修する
・安定した運送需要である食品を扱えるように、既存の倉庫を冷蔵倉庫に改修することで安定した運送需要を獲得する

〇一般貨物の保管をしていた倉庫業が、EC物流に参入するために最新のロボティクスのマテハンを導入する
・パレットラックやネステナ―等の一般的なマテハンではなく、AGVやAMRといった自動搬送の仕組みの導入
・GTP(Goods to person)と言われる人がピッキングのために動くのではなく、人のところにモノが動いてくる仕組みを導入

3の付加価値額の増加要件は、要件を満たす事業計画を作成して申請することになります。事業再構築補助金を使って投資をすることによって、付加価値が増加する事業計画について審査されることになります。

<補助額と補助率>

補助額と補助率については、以下の通りになります。
※大企業は対象ではないので、その点はご注意ください。

<中小企業>
通常枠 補助額 100万円~6,000万円 補助率 2/3
卒業枠* 補助額 6,000万円超~1億円 補助率 2/3
*卒業枠:400社限定。事業計画期間内に、①組織再編、②新規設備投資、③グローバル展開のいずれかにより、資本金又は従業員を増やし、中小企業から中堅企業へ成長する事業者向けの特別枠。
※中小企業の範囲については、中小企業基本法と同様。

<中堅企業>
通常枠 補助額 100万円~8,000万円
補助率 1/2 (4,000万円超は1/3)
グローバルV字回復枠** 補助額 8,000万円超~1億円 補助率 1/2
**グローバルV字回復枠:100社限定。以下の要件を全て満たす中堅企業向けの特別枠。
①直前6か月間のうち任意の3か月の合計売上高がコロナ以前の同3か月の合計売上高と比較して、15%以上減少している中堅企業。
②補助事業終了後3~5年で付加価値額又は従業員一人当たり付加価値額の年率5.0%以上増加を達成すること。
③グローバル展開を果たす事業であること。

補助金になじみのない人のために、簡単に補助額と補助率について説明させていただきます。補助額とは、受け取れる補助金の金額になります。ですので、中小企業の通常枠では最大6,000万円の補助金を受け取れることになります。補助率とは、投資などで使った金額に対して、どれくらいの比率で補助金が受け取れるかを示したものになります。

例えば、中小企業が通常枠で3,000万円の投資をした場合は、補助率が2/3ですので、2,000万円が補助金の受け取れる金額となります。一方で、1.2億円の投資をした場合、補助率2/3で計算すると8,000万円となりますが、補助額の上限が6,000万円となりますので、受け取れる補助金は6,000万円になります。

3月には公募要領が発表されて、申し込み方法や審査の視点、そのような取り組みが対象になるかも判明するかと思いますのでもう少し待ちましょう。

ものづくり補助金

一般的に「ものづくり補助金」と呼ばれていますが、正式名称は「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金」となり、製造業だけでなく幅広い業種が対象の補助金になります。

この補助金が始まった時は、製造業のみが対象となっていたので、通称が「ものづくり補助金」で定着していますが、物流界隈(物流センターや倉庫業、運送業)でも使える補助金になります。

〇ものづくり補助金の目的

公募要領では、ものづくり補助金の事業の目的として以下の通り書かれています。

中小企業・小規模事業者等が今後複数年にわたり相次いで直面する制度変更(働き方改革や被用者保険の適用拡大、賃上げ、インボイス導入等)等に対応するため、中小企業・小規模事業者等が取り組む革新的サービス開発・試作品開発・生産プロセスの改善を行うための設備投資等を支援する。

※設備投資が対象になるので、事業再構築補助金のように建物関係は対象になりません。

物流界隈(物流センターや倉庫業、運送業)で、どんなことで使えるかを考えてみると、こんなことが考えられるのではないでしょうか。
・WMS(倉庫管理システム)の導入
・動態管理のTMS(輸配送管理システム)やデジタコの導入
・AGVやAMR等での搬送の自動化
・GTPの導入による品揃え効率の向上
・他ロボティクス関連の新技術の導入

<申請の要件>

以下の3つを満たす3~5年の事業計画を策定して実行する必要があります。
・付加価値額 +3%以上/年
・給与支給総額+1.5%以上/年
・事業場内最低賃金≧地域別最低賃金+30円

特に昨年から変わったことが、賃上げが計画での目標だけでなく実際に賃上げを実行できていないと補助金を返還しないといけなくなったことです。申請を検討される際はその点ご注意ください。

補助額と補助率

補助上限 [一般型] 1,000万円
     [グローバル展開型] 3,000万円
 補 助 率 [通常枠] 中小企業 1/2、 小規模企業者・小規模事業者 2/3
     [低感染リスク型ビジネス枠] 2/3

こちらは、昨年度に複数年度の予算として実施されているの、公募要領なども公表されているので、詳細はものづくり補助事業公式ホームページである「ものづくり補助金総合サイト」をご確認ください。

IT導入補助金

IT導入補助金は、ITツールを導入経費について補助するものになります。特徴的なのは、ITベンダーが登録したITツールしか補助金の対象にならない点です。

逆に言えば、ITベンダーが登録しているITツールは対象になるってことです。今は申請期間ではないのでITツールの検索ができませんが、WMSやTMSや他のシステム等いろんなITツールが登録されています。IT投資を検討されている方は候補に入れられてはいかがでしょうか。

あと、特徴的なのはITベンダーが申請を支援してくれる点ですね。どこまで支援してくれるかはITベンダーにもよりますが、これは心強いですね。
(我々のような支援者はあまり出る幕がありません。)

参考までに昨年の公式サイトのリンクをお知らせします。

<補助額と補助率>

参考までに昨年の公式サイトのリンクをお知らせします。
 A類型 補助額:30万〜150万未満 補助率1/2
 B類型 補助額:150万〜450万以内 補助率1/2
 C類型 補助額:30万~450万以内 補助率2/3~3/5
 ※各類型の違いは公式サイトでご確認ください。

補助金は上手く使うことができれば事業の飛躍に有効です。一方で、補助金目的での投資などは本末転倒です。補助金が出ると言っても残りは自分たちで負担する必要があるのですから。
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