最近は街中で駐車中のトラックが輪止め※しているのを見かけることが多くなりました。安全意識が高い運送会社であれば乗用車・トラックを問わず経営者が率先し社員全員で輪止めを実行しています。一方で、依然として輪止めができていない車両が少なからず存在するのも事実です。輪止めがおざなりで斜交いになっているトラックも散見されます。また、同じ運送会社でも営業所によって、同じ営業所でも運転手によって徹底度合いに差が見受けられたりします。
※「輪留め」「歯止め」「車止め」といった呼び方もあるようですが、ここでは「輪止め」と書くことにします。
安全対策としての輪止めの意義については周知のことなので触れません。私がトピックとしてこれを取り上げる理由は以下の2つです。
- 輪止めは誰でもできます。問われているのは、運転手の「できる・できない」ではなく「やる意志があるのか・ないのか」です。
- 輪止めは誰にも見えます。従って、多忙な経営者あるいは現場経験が少ない経営者であっても現場の状況が見て取れます。
つまり、輪止めは運転手の安全意識を見える化する指標であると同時に、職場の規律や会社の安全に対する姿勢を推し量る指標でもあるのです。前出のような安全意識が高い運送会社であっても、すべての運転手がいつでも・どこでも・正しく輪止めをするよう習慣づけることは容易ではありません。それでは、このように簡単なはずの安全対策がなぜ徹底できないのでしょうか?その理由を考えることこそ、会社の課題に向き合い、組織を変えていくスタート地点であると私は考えています。私が本稿で輪止めを取り上げる本当の理由もここにあります。
ある程度の共通性はあるものの輪止めが徹底できない具体的な理由は会社によって異なります。従って、正しい理由を究明し効果的な解決策を考えることができるのは、その会社の経営者と社員だけです。この場合、経営者が社員に輪止めの徹底を口やかましく指示しても、全員に浸透させるには限界があるのではないでしょうか。むしろ経営者がトップダウンでやるべきこととして重要なのは以下の2つだと私は考えています。
① 「なぜ輪止めが徹底できないのか」という問いを立てること
② 社員が自らその原因と解決策を考える場を設けること
原因と解決策を考える場(会議など)では運営にファシリテーターが必要かもしれません。また、解決策を実行しPDCAを回していく活動も欠かせません。これらにおいても経営者が主導的役割を担うことはありますが、可能であれば管理職や一般の社員にどんどん任せていけばよいと思います。しかし、①と②については経営者のリーダーシップが大きくものを言います。
自分の職場で輪止めをしている車としていない車が混在している光景を目にすることはないでしょうか?そうであれば、皆さんでその理由を考えてみてください。この問題を追求していくと、職場の規律、管理者のリーダーシップ、社員の士気など様々な問題点が見えてくるはずです。経営者が社員を巻き込みながらその原因と解決策を考えることで組織を変えていく最初の一歩を踏み出していただきたいと思う次第です。