「会議」と「日報」で組織は変わる!(その2)

営業情報の収集はCIAの諜報活動と同じ

 先月は組織運営における会議と日報の重要性について投稿しました。2回目の今回は日報についてお話しします。

 随分前に読んだスパイ小説の受け売りですが、CIAは情報の95%を新聞など刊行物の記事から得ているそうです。会社の営業部門にとって重要な情報は顧客やライバル会社の動向ですが、CIAにとっての刊行物に相当するのが営業日報です。実際、私も営業日報に目を通すことで多くの情報を収集し、活用し、そして成果を挙げることができました。以下に一例を紹介します。

営業日報がもたらす効果

 ある時、新入社員の一人が書いた日報に「顧客に請求書を持参した時、担当者から料金表を提出するように言われました」とありました。たった一行だけの報告です。私が理由を尋ねたので彼がその担当者に訊いたところ、着任したばかりの上司から各社の料金を比較するよう指示が出ているとのことでした。そこで先輩社員のサポートも得ながら勝負できる料金表を提出し、シェアアップを達成しました。この場合において日報がどんな効果を生んだのでしょうか。

 まず、顧客シェアアップという直接的な効果があります。次に、この社員にとって良い学習機会になったという効果もあるでしょう。しかしそれだけではありません。請求書の持参という事務仕事(=郵送すればすむので考えようによっては非効率な仕事)であったものが、営業活動として付加価値を生み出す行為に変わっているのです。彼がわずか一行の日報を書いてくれただけでこのような変化が生じました。同様の事例はその後も毎年数件発生し、決して1回限りの特別な出来事ではありませんでした。その他にも日報がきっかけで超大手顧客のシェアが一気に3倍増になったり、ライバル会社の人事情報が入ってきたり、親会社が子会社をスルーして何か企んでいたりといった生々しい事例が何度も上がってきました。それだけではなく、日報を書いている社員がどんなことを考えているのか、どんな課題にぶつかっているのか、そして頑張ってくれている様子などもしっかり伝わってきます。

作業日報の事例紹介

 営業日報だけでなく、現場を持っている企業であれば作業日報も重要です。「今日は忙しかったが、途中から協力会社の社員が応援に入ってくれたおかげで作業が早く終わった。」という日報が上がってきたことがあります。作業管理専任者(支店長直属で作業の品質・安全・コンプライアンスを監督)から「下請法に抵触するのでは?」とのコメントが付いています。すると指摘を受けた現場の管理職がすぐにアクションを起こしました。まず、下請法の正しい運用方法を確認し、全員を集めてミーティングを行いました。彼がミーティングで最初にやったことは、全員の前で日報を書いた担当者に「ありがとう」と心から感謝の意を伝えたことです。その後で、協力会社と正しく作業するにはどうやったらよいか、全員で話し合って問題を解決しました。問題に気付いてくれた作業管理専任者も、すぐに問題解決に動いてくれた現場の管理職も素晴らしいと思います。しかし、自身は問題に気付いていなかったとはいえ、そもそもは作業担当者が素直に事実を日報に書いてくれたおかげで問題の早期発見と適切な対処ができたのです。

なぜ日報が必要なのか、なぜ社員は日報を書きたがらないのか

 経営者や管理者がいくら優秀でも自分で直接見聞きできることはわずかです。そして部下や自分以外の社員が見たり聞いたりしたことを共有する有効な手段が日報なのです。しかし、営業日報にせよ作業日報にせよ社員がきちんと書いてくれるとは限りません。むしろ、上司がしょっちゅう尻をたたかないと日報を書いてもらえないのが一般的な実態ではないでしょうか。なぜ担当者は日報を書きたがらないのか、次回はその理由をお話したいと思います。

前回の記事はこちらです。 ☞ https://www.logi-ya.jp/504/

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